ウァレンティヌスの祝日の祝い方




「リナさん!
 一緒にチョコケーキ作りましょう!」


すべては、このアメリアの一言から始まった。



「・・・・チョコケーキ?」
「はい。
 もうすぐバレンタインですから」
そうにこやかに言うアメリアの言葉が、リナは理解できなかった。

バレンタインに、チョコレートケーキ?
その発想は何処からきたのだろう。
「ちょっと待って、アメリア。
 どうしてバレンタインだとチョコレートケーキを作る事になるの?」
「ええ!!!???
 まさかリナさん、バレンタインを知らない、なんて言うんじゃ・・・・」
「それくらい知っているわよ。
 たしか、北の地方にあるちいさな山間の村が発祥の、ウァレンティヌスの祝日でしょ。
 日ごろの友人や恋人とカード交換する日じゃない」
「え、カード交換?」
リナのあっさりとした言葉に、アメリアは少なくとも、驚いたようだった。
「アメリア?」
「そうか、地域によってその日贈る物が違うって事ですね!
 リナさんはゼフィーリアの出身でしたっけ。ここの街では、チョコレートを贈る事になってるんだそうです!」
「この街、って・・・セイルーンは?」
「セイルーンにはそんなイベント無いです」
「ないの?」
「はい。
 でも、こんな面白そうなイベントには是非とも、参加しなくては!」


そう言う、アメリアの内心は、実は。

―普段のリナさんなら、カードには素っ気無い言葉を書いて終わっちゃいますよね。
 けれど、チョコレートなら・・・・・!
 ・・・・この街では、チョコレートを異性に贈るって事は告白と同じだって事、リナさんには黙っておきましょう・・・。
 それで、リナさんとガウリイさんの仲が進展するなら、これも正義です!!
 ああ、素晴らしいです〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜(特大はぁと)―






それが、バレンタイン前々日のリナとアメリアの会話だった。




そして、バレンタイン当日の、朝。



「アメリアに乗せられてつい、つくっちゃったけど・・・・
 どうして、ガウリイ以外にあげちゃ駄目だ、なんて言ったのかしらあの子?」
リナは、アメリア達に書いたバレンタインカードの横に転がる、一つの包装紙に包まれた物をしげしげと眺めていた(アメリアの画策により、リナはこの街ではバレンタインにチョコレートを贈るという事が意味する事を、ついに知らずにいたのである)。だから、当然の如く――



まあ、アメリアの見本、って形でつくったから、一個しかないんだもん、誰にもあげないで自分で食べちゃおう。

と思ったのだったが、アメリアは、それを必死になって阻止したのだ。


・・・・・なにかあるわね・・・・

とは思ったものの、実のところ、あんまり気にしていないのだった。










「あ、リナさん。
 今日は一日、自由行動しましょうね」
朝起きた途端、アメリアが唐突にそう言った。
「あたしは別にいいけど・・・・どうしてそんなにこの街に留まるのよ?
 確かに、ご飯は美味しいけど」
「・・・・・・えっと、それは・・・・」
アメリアは、その問いに口ごもった。
言い訳を何も考えていなかったのだ。
「アメリア。あんた、やっぱり、あたしになにか隠してるでしょ?」
にっこり、と笑いながらいうリナの問いかけに、アメリアは、びくぅっ!とあからさまに引きつった。
それは、何も言わなくても、たとえ否定したとしても、リナの問いを肯定しているのと同じだった。
「い、いいえ!!!!
 なんにも、隠してないですっ!」
「あたしに隠し事しようとするなんていい度胸じゃない。
 ほらほら、ささっと吐くッ!」
「そ、それじゃリナさん。
 あたしはこれで・・・・!」
「あ、ちょっとアメリア!」
アメリアはそのままそそくさと宿を出ていく。もちろん、自分が作ったチョコレートケーキを持って出るのは忘れなかった。







「まったく、どうしたのよ一体・・・・・カード渡しそびれちゃったじゃない」

アメリアの一連の行動の意味がさっぱり理解できないリナは一人、部屋に残される事になったのだった。
















結局、リナはその日は部屋で魔道書を読んでいた為、宿のランチを適当に食べただけだった。がうりいもゼルもアメリアも、今日はどこかに行っていない。
それからまたすぐに魔道所を読みに部屋に戻っていたのだが、ふと甘いものが飲みたくなって部屋から出た時、偶然、ガウリイが廊下にいるのを見つけたのだった。
「あ、ガウリイ。
 丁度よかった。昨日アメリアと作ったの。だから、あげるわ、これ」
「・・・なんだ? これ」
リナから渡された包みを不思議そうに眺めながらガウリイは言った。
「ケーキ。
 あの子が作りたい、って言うから、見本に作ったわけ。
 んで、自分で食べちゃってもいいかな、って思ったんだけどさ。
 せっかく包装したわけだし? 誰かに贈ろうと思ってね。そしたら、あんたくらいしかいないじゃない。
 ってな訳で受け取りなさい」
そう言ってから、リナは、ちょっと出かけてくるわ〜。と言って歩いていったのだった。






そして、受け取ったガウリイはというと。


「おお♪ 美味しそうなケーキだなぁ。
 でもリナからのプレゼントなんて不気味だよな〜・・・・」

と言いつつも、にこやかに食べたのでした。





そう、実はこの二人。
この街でのバレンタインの日にチョコレートを贈る意味を、どちらも、理解していなかったのである・・・・・。



当然、二人の仲が進展する事はなかった。
















〜おまけ〜


「あ、リナ」
「なに花なんか持ってんのよガウリイ。
 いやあ、あんたがそうしてると絵になるわねえ」
「なにって、バレンタインの贈り物。
 身近な女性に花とカードを贈る日だろ、今日って」


・・・・・・ウァレンティヌスの祝日、それは国によって祝い方の全く異なる祝日・・・・・。





作者様のお言葉。
あう・・・・・なんだか、糖度0のガウリナです。
・・・と、いうか・・・・ガウリナなんでしょーか? これ。
ガウリイちょこっとしか出てないですし、二人の関係は特に意識しないで書いてたんですけど、
気がついたら恋人以前、ただの旅の相棒扱いになってしまいましたし・・・・。

ちなみに、アメリアのチョコレートケーキ渡す相手は、当然、ゼルですv

丁度バレンタインの時期だったので、こんなもの書いてみました。

一周年おめでとうございましたv
それでは。




管理人より
きゃぁぁあああぁぁああああ!!
本当に嬉しいですv糖度は十分ですv
身近=リナというガウリイの思考回路に
あのリナが食べ物をガウリイにあげるという時点で甘いお話です><
素敵な作品ありがとうございました。大事にさせていただきますvそれでは〜


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